コラム2026-04-21

【選手の素顔 #7】三苫薫|「左の絶対王」がW杯イヤーに爆発する

プレミアリーグ25/26シーズン8ゴール6アシスト、直近トッテナム戦ではファン・バステン級のボレー同点弾を決めた三苫薫の基本プロフィール、故郷川崎、キャリア年表、代表での活躍、W杯2026で背負う期待と課題を整理するコラム。

#W杯

プレミアリーグ25/26シーズン、リーグ戦8ゴール6アシスト。直近の4月18日トッテナム戦では「ファン・バステンを思わせる」と指揮官が絶賛するボレー同点弾を叩き込んだ。ブライトンの背番号22三苫薫(みとま かおる)は、いまや日本代表の左サイドに欠かせない絶対的存在だ。W杯2026本大会を約2か月後に控えた今、彼が背負う期待と、乗り越えるべき課題を整理する。

menu_book 基本プロフィール

三苫薫(ブライトン)
三苫薫(ブライトン)

項目内容
生年月日1997年5月20日(28歳)
出身地神奈川県川崎市
身長/体重178cm/73kg
ポジション左ウインガー/OMF
利き足右足
所属クラブブライトン&ホーヴ・アルビオン(プレミアリーグ)
背番号22
日本代表の経験A代表:2022年デビュー、通算31試合9得点、カタールW杯出場

arrow_forward 故郷を知る

神奈川県川崎市生まれの三苫は、幼少期から川崎フロンターレの一貫アカデミー育ちである。地元の「さぎぬまSC」から川崎フロンターレU-10へと進み、U-12・U-15・U-18を経て大学へ。多摩川の河川敷、等々力陸上競技場周辺、溝の口の商店街——そうした川崎の日常風景が、三苫の技術的土台を支えてきた。

川崎フロンターレはJ1で常勝軍団として君臨するクラブであり、そのユース育成はJFA・Jリーグの全国モデルとされる。そこから「大学経由でプレミア」という独自のルートを切り拓いた三苫は、川崎の子どもたちにとっての憧れのモデルケースとなっている。

calendar_month 年代別キャリア年表

年齢時期所属/主な出来事
6~9歳2003~2006さぎぬまSC(地元少年団)
10~12歳2007~2009川崎フロンターレU-10/U-12
13~15歳2010~2012川崎フロンターレU-15
16~18歳2013~2015川崎フロンターレU-18(ユース)
19~22歳2016~2019筑波大学蹴球部(ドリブル研究論文で話題)
22~23歳2020~2021川崎フロンターレ(J1優勝貢献・ACL出場)
24歳2021~2022ロイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズ(ベルギー・レンタル)
25歳2022ブライトン加入、カタールW杯出場(ドイツ・スペイン戦)
27歳2024~2025プレミア月間最優秀ゴール、BBC年間最優秀ゴール
28歳2025~2026左膝怪我からの復帰、トッテナム戦ボレー同点弾

local_fire_department 25/26シーズン、確立した「決めきる左ウインガー」

24/25シーズン後半に経験した左膝の長期離脱を乗り越え、三苫は25/26シーズン後半戦でチームの攻撃の核として完全に機能している。4月18日のトッテナム戦、途中出場からパスカル・グロスの深いクロスに合わせた右足ボレーは、指揮官ファビアン・フュアラーをして「1988年のファン・バステンを思わせる」と言わしめ、試合を同点に引き戻した。

特筆すべきはゴールパターンの多彩さだ。縦突破からのクロス、内側カットインからのシュート、そして非利き足のボレー。ブライトンは過去6試合で5勝と急上昇中で、三苫の数字はその曲線とほぼ一致している。

項目22/2323/2424/2525/26(第34節時点)
リーグ戦得点72108
出場試合32232728
得点/試合0.220.090.370.29

得点/試合の推移が物語るのは、「ドリブラー」から「決定者」への変化だ。代表のエースストライカーに並ぶ決定力を左WGから供給できる点が、今の三苫の最大の価値である。

sports_soccer 代表での活躍 ― カタールW杯から続く「左の絶対王」

2022年カタールW杯、ドイツ戦で魅せた鮮烈なドリブル突破、クロアチア戦での粘り強いプレーは、日本を決勝トーナメントに導いた記憶としてまだ新しい。A代表通算31試合9得点。森保ジャパンにおいては「左サイドは三苫」が既定事項となっており、同じレーンを使うSB・IHとのコンビネーションまで代表の攻撃構造そのものが三苫を起点に設計されている。アジア最終予選を通じても、彼が1対1で相手を剥がして時間を作るだけで日本全体の前進量が目に見えて変わった。

star 三苫薫を一言で表すと ― 「ドリブラー」と「フィニッシャー」の同居

三苫のプレーを分析するうえで、欠かせないキーワードが2つある。

キーワードプレー上の現れ方
ドリブラー筑波大学で自らの武器を研究論文に落とし込んだタッチの柔らかさ/守備者の重心を奪う独特のフェイント/縦にも横にも刺せる重心の低さ
フィニッシャー非利き足(右)でもボレーを決め切る精度/内側で受けてからの対角シュート/クロスへのダイレクト合わせ

この2つを高い水準で両立できる左WGは、欧州トップリーグを見渡しても片手で数えるほどしかいない。「仕掛けて、決める」。これが25/26の三苫を語る最短のキーワードだ。

favorite W杯2026で背負う期待 ― 日本のグループFを突破する鍵

日本が入ったW杯2026グループFは、オランダ・スウェーデン・チュニジア。ポット2以上を含む強豪揃いの組み合わせを突破するためには、左サイドで1対1を勝てる仕掛け役の存在が不可欠である。

対戦相手守備陣の特徴三苫に期待される役割
オランダファン・ダイクを中心としたハイライン+攻撃的な右SB背後への斜め抜けと、1対1での剥がしからのラストパス
スウェーデン長身CB2枚による空中戦の強さ地上戦でSBを釣り出し、2列目のシュートチャンスを演出
チュニジア中央を固める堅実なブロック+速いカウンターサイドでの1対1勝利とニアゾーンへの速いクロス

3試合すべてで「違うタスク」を求められるのが現代の左WGの宿命だ。しかし今の三苫ならば、すべてに一定水準で応えられるだけの引き出しを既に持っている。

live_tv SNS・メディア発信

三苫のSNSは「寡黙の中に熱」という言葉がぴったりだ。Instagram(@kaoru.m.0520 open_in_new)では試合後の1枚写真と短いコメントが中心で、私生活の露出を極力抑える「研究者肌」のスタイルを貫く。X(旧Twitter、@kaoru_mitoma open_in_new)も同様で、自己PRより試合に対するリスペクト投稿が多い。

一方で、筑波大学時代に自身のドリブル技術を研究論文「アタッカーの相手を抜く動作に関する研究」として残したことは有名で、メディアインタビューでもプレー分析を自ら言語化する論理性が際立つ。JFA公式チャンネルやNHK・民放スポーツ番組での特集は「派手な演出なし、論理だけで魅せる」スタイルで定評があり、W杯イヤーに向けてドキュメンタリー番組の出演依頼も増えている。

info 乗り越えるべき課題は「負担の偏り」

一方で、楽観ばかりもしていられないのがコンディション面だ。24/25シーズンに経験した左膝の長期離脱はまだ記憶に新しく、今季も試合によっては途中出場で負荷をコントロールしている。コンディションをW杯開幕にどう合わせるかが最大のテーマとなる。

加えて、代表では三苫を起点に左のユニットが設計されるため、彼が万が一離脱した場合の「プランB」の整備も不可欠だ。シーズン終盤、壮行試合でのプレータイム配分を含めて、森保監督とJFAの采配が問われる。

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