コラム2026-06-28

【鬼門・PK戦】日本代表は“一発勝負”で勝てるのか? 直近5度の白星と鈴木彩艶の壁、王国ブラジルの素顔

決勝トーナメントはPK戦の確率が跳ね上がる。日本代表の直近5度のPK戦結果、守護神・鈴木彩艶のセーブ力、そして対戦相手ブラジルのPK戦史まで徹底検証。日本に“一発勝負”を勝ち抜く資格はあるのか。

#日本代表#W杯#戦術分析

ノックアウトラウンドは、90分でも120分でも決着がつかなければ最後はPK戦。リーグ戦には存在しない“一発勝負”が、栄光と落胆を一瞬で分ける。決勝トーナメントで日本の前に立ちはだかるブラジルを相手に、もしPK戦までもつれたら——。日本代表は本当に勝てるのか。直近のデータと守護神・鈴木彩艶、そして“王国”の素顔から検証する。


local_fire_department なぜ「PK戦」を語るのか

まず、この数字を見てほしい。近年のW杯では、決勝トーナメントがPK戦で決着するケースが急増している。直近3大会の決勝トーナメント(各16試合)を集計すると、こうなる。

大会決勝T試合数PK決着PK決着率
2014 ブラジル16425.0%
2018 ロシア16425.0%
2022 カタール16531.3%
3大会合計481327.1%

つまり決勝トーナメントの約4試合に1試合がPK決着になっている計算だ。しかも2022年は大会史上最多の5回を記録し、回数は3大会で右肩上がり。さらに2026年大会は新設の「ラウンド32」が加わり、決勝トーナメントは32試合へと倍増する。PK戦に巻き込まれる絶対数は、さらに増えると見ていい

グループステージは勝点で順位が決まり、引き分けも許される。しかし決勝トーナメントは違う。勝者が次へ進み、敗者は去る。延長戦でも決着がつかなければ、すべてはPK戦に委ねられる。トーナメントを勝ち上がるほど実力は拮抗し、PK戦に突入する確率は上がっていく。つまり「PK戦に強いか」は、ベスト8・ベスト4を狙うチームにとって避けて通れないテーマなのだ。だからこそ、この検証には意味がある。

そして日本代表にとって、ここは長年の“鬼門”だった。


sports_soccer 検証1|日本代表・直近5度のPK戦に白星はあるか

結論から言えば——白星はある。日本代表(フル代表)の直近5度のPK戦を新しい順に並べると、こうなる。

開催年・大会ラウンド対戦相手PKスコア勝敗
2022 W杯カタールラウンド16クロアチア1-3● 敗退
2011 アジアカップ準決勝韓国3-0○ 勝利
2010 W杯南アフリカラウンド16パラグアイ3-5● 敗退
2007 アジアカップ3位決定戦韓国5-6● 敗戦
2007 アジアカップ準々決勝オーストラリア4-3○ 勝利
  • 2022年:南野・三笘・吉田の3本をGKリヴァコヴィッチに止められて敗退
  • 2011年:2-2からのPK戦を川島永嗣の好守で完勝し、のちに優勝
  • 2010年:駒野友一のキックがクロスバーを直撃して涙
  • 2007年:オーストラリア戦は制したが、韓国との3位決定戦で散った

直近5度の通算は2勝3敗。さらに1つ遡れば、2004年アジアカップ準々決勝のヨルダン戦で、GK川口能活の“神セーブ”によって4-3で勝ち抜いた伝説の一戦もある。日本は決して「PK戦そのもの」に弱いわけではない。アジアの大舞台では、何度も一発勝負を制してきた。

問題は——舞台がW杯になると、話が変わることだ。


info 検証2|W杯という最大の舞台では「0勝2敗」

日本がW杯本大会でPK戦を戦ったのは2回。2010年パラグアイ戦と2022年クロアチア戦、その両方で敗れている。つまりW杯のPK戦に限れば、戦績は0勝2敗

  • 2010年:スコアレスの死闘の末、駒野のキックがバーに弾かれ3-5
  • 2022年:1点を先に取りながら延長で追いつかれ、PK戦で3本を止められ1-3

アジアでは勝てても、世界の頂点を懸けた舞台では勝ち切れない。これが日本の“鬼門”の正体だ。決勝トーナメントでブラジルとPK戦になったとき、この負の歴史を断ち切れるかどうかが最大の焦点になる。


star 検証3|鈴木彩艶という“これまでにいなかった壁”

鈴木彩艶(日本代表GK・パルマ所属)
鈴木彩艶(日本代表GK・パルマ所属)

それでも今回、日本には過去2度のW杯敗退時にはなかった“武器”がある。守護神鈴木彩艶(すずき・ザイオン)だ。

  • 所属:パルマ・カルチョ1913(イタリア・セリエA)
  • 生年月日:2002年8月21日/日本代表では背番号1
  • 2025-26シーズン(セリエA):18試合出場・セーブ率70.0%・5クリーンシート(56セーブ/被シュート80本)

注目すべきは、彼がPK局面で結果を残している点だ。2025年10月のジェノア戦(セリエA)では、後半アディショナルタイムに相手のPKを“膝”で弾き出してチームを救い、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。セリエAでの初PKストップを、最も緊張する時間帯にやってのけたのである。イタリアメディアからは「ブッフォンか」とまで評された。

190cmを超える長身から繰り出す反応速度と度胸。欧州トップリーグの大舞台で“止められるGK”であることを証明している守護神は、川島(2010)や権田(2022)の時代にはなかった、日本にとって新しい希望だ。PK戦は5割の運の世界とも言われるが、GK一人の存在がその確率を確かに動かす。


sports_soccer 検証4|“王国”ブラジルもPK戦は盤石ではない

では、相手のブラジルはどうか。サッカー王国のPK戦史を紐解くと、意外な事実が見えてくる。W杯でのPK戦は通算3勝2敗。決して“不敗神話”ではない。

開催年・大会ラウンド対戦相手PKスコア勝敗
1994 アメリカ決勝イタリア3-2○ 優勝
1998 フランス準決勝オランダ4-2○ 勝利
2014 ブラジルラウンド16チリ3-2○ 勝利
1986 メキシコ準々決勝フランス3-4● 敗退
2022 カタール準々決勝クロアチア4-2● 敗退

1994年はバッジオのキックが枠を越えての24年ぶり戴冠、2014年はGKジュリオ・セザルの好守で掴んだ辛勝だった。

注目は直近のW杯PK戦=2022年で敗れていること。しかも相手は、日本を破ったのと同じクロアチアだった。世界屈指のタレントを揃えたブラジルですら、一発勝負では足をすくわれる。PK戦は“強者必勝”ではない——この一点に、日本の勝機が宿る。


arrow_forward 結論|鬼門は、破れる

データを整理しよう。

  • 日本のW杯PK戦は0勝2敗。確かに鬼門だ
  • だが「PK戦そのもの」に弱いわけではない。アジアの大舞台では何度も勝っている
  • 今回は鈴木彩艶という、これまでの敗退時にいなかった“止められる守護神”がいる
  • 相手ブラジルも直近のW杯PKで散っており、決して盤石ではない

もちろん理想は、PK戦にもつれ込む前に120分で決着をつけること。だが、もし“一発勝負”の時を迎えても——日本の勝機はゼロではない。むしろ、長年の鬼門を断ち切る条件は、過去のどの大会よりも整っている。

ブラジル相手に、鈴木彩艶が一本止める。その瞬間、日本サッカーの歴史が変わるかもしれない。


info 本記事のPK戦記録はWikipedia「PK戦の記録」およびJFA公式記録、鈴木彩艶のシーズン成績はFootyStats(2025-26セリエA/2026年6月時点)に基づく。決勝トーナメントの対戦カード・日程は今後の試合結果により変動する場合があります。

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