【選手の素顔 #25】前田大然|セルティックを率いたスプリント・モンスター、ドーハで走り続けたW杯ジョーカーの進化
スコットランドの名門セルティックで主力を務める前田大然(28歳・大阪府南河内郡太子町出身)の素顔を深掘り。カタールW杯ドイツ撃破の立役者、スペイン戦で62回・クロアチア戦で先制点と1試合に出るスプリントに記録を残したハイプレス要員。
前田大然(まえだ だいぜん)、28歳。スコットランドの名門セルティックで通算145試合45得点。24/25シーズンに公式戦49試合33得点とキャリアハイを記録し、スコティッシュ・プレミアシップMVPに選出された。カタールW杯スペイン戦は62回のスプリント、クロアチア戦に興しては43分に先制点と、ドーハで9ブを動かしたハイプレス・ストライカーだ。W杯2026本大会を約2か月後に控えた今、彼が背負う期待と、乗り越えるべき課題を整理する。
menu_book 基本プロフィール

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1997年10月20日(28歳) |
| 出身地 | 大阪府南河内郡太子町 |
| 身長/体重 | 173cm/67kg |
| ポジション | FW(CF/左WG)、状況に応じて左WB |
| 利き足 | 右足 |
| 所属クラブ | セルティックFC(スコティッシュ・プレミアシップ) |
| 背番号 | クラブ:38/代表:11 |
| 日本代表の経験 | A代表2019年デビュー、通算27試合4得点。2022カタールW杯クロアチア戦で先制点 |
arrow_forward 故郷を知る
大阪府南河内郡太子町は聖徳太子ゆかりの古墓と緑豊かな里山が広がる人口約1.3万人の町。大阪都心へのベッドタウンとして発展しつつ、子どもがのびのびと走り回れる自然環境が残る点が特徴だ。前田はこの土地で「走る基礎体力」を身につけた。
獣医師の父と動物病院を営む母のもとに生まれ、小学4年で堀市から太子町に転居してサッカーを始めた。中学時代は近隣の強豪クラブ「川上FC」(13人のJリーガーを輩出)でプレーした。大阪南部はセレッソ大阪の育成網が張り巡らされる激戦区だが、前田はクラブ系ではなく町クラブ→山梨学院高への単身越境留学という異色の道を選んだ。他人と違うルートを取る胆力と、走り続ける体力は、太子町の野性豊かな育成スタイルと分かちがたい。W杯本大会の活躍は、太子町という町の誇りとなる。
calendar_month 年代別キャリア年表
| 年齢 | 時期 | 所属/主な出来事 |
|---|---|---|
| 〜9歳 | 〜2007 | 堀市で少年期を過ごし、小4で太子町に転居しサッカー開始 |
| 13〜15歳 | 2010–2012 | 近隣の強豪クラブ「川上FC」(Jリーガー13人輩出) |
| 16〜18歳 | 2013–2015 | 山梨学院大学附属高校へ単身越境。高1冬に規律違反で約1年間サッカー部除籍→復帰、高3でプリンスリーグ関東得点王(12ゴール) |
| 18〜22歳 | 2016–2020 | 松本山雅FC(J1・J2)。通算56試合9得点 |
| 20歳 | 2017 | 水戸ホーリーホック(期限付き) |
| 22〜23歳 | 2019–2020 | CSマリティモ(ポルトガル・期限付き)。23試合3得点 |
| 22〜23歳 | 2020 | 横浜F・マリノス(期限付き→完全移籍) |
| 23歳 | 2021 | 横浜FM。J1リーグ36試合23得点でJ1得点王 |
| 24歳〜 | 2022/1〜現在 | セルティックFC(当初期限付き→完全移籍)。通算145試合45得点 |
local_fire_department 25/26シーズン、キャリアハイMVPからの反動を越えて
24/25シーズンのキャリアハイ(公式戦49試合33得点、スコティッシュ・プレミアシップMVP)の後、2025年8月の移籍市場で本人は移籍を望んだが、クラブが代替選手を確保できず残留。シーズン序盤は9-10月で2得点と低調となるが、シーズンを通しては25/26プレミアシップで22試合7得点5アシスト、公式戦全体では32試合9得点と主力としての存在感を示している。
| シーズン | 公式戦出場 | 得点 |
|---|---|---|
| 21/22(後半) | 25 | 5 |
| 22/23 | 49 | 11 |
| 23/24 | 50 | 8 |
| 24/25 | 49 | 33 |
| 25/26(進行中) | 32 | 9 |
sports_soccer 代表での活躍 ― ドイツ撃破・クロアチア戦先制点のスプリンター
前田の代表デビューは2019年6月17日 vs.チリ戦。以限通算27試合4得点を記録している。
2022カタールW杯ではドイツ戦1トップ先発で7分交代、スペイン戦で62分間で62回のスプリントを記録して「守備的CF」としてドイツ・スペイン撃破を支えた。クロアチア戦1トップ先発では43分に先制点、そしてその試合で64分間で68回のスプリントを走った(クロアチアのペリシッチが105分で71回と僅差に見下すだけの数字)。
本人は自身のプレースタイルを「フェラーリではなくプリウス(静かに速く詰める)」と表現した。森保ジャパンでの位置づけはスピード型・ハイプレス要員として明確だ。
star 前田大然を一言で表すと ― 「スプリント・モンスター」と「不退転のハードワーカー」の同居
前田を理解するうえで欠かせないキーワードが2つある。
| キーワード | プレー上の現れ方 |
|---|---|
| スプリント・モンスター | 50m走5秒8の加速を試合終盤まで維持/1試合60-70回超のスプリント本数/ロングカウンターでの裏抜けの鋭さ |
| 不退転のハードワーカー | CB/GKまで追い回す妥協なきハイプレス/守備時の戻りの速さで左SBの組み立てまでカバー/個人スタッツ二の次の自己犠牲的姿勢 |
両立の意義は明確だ——「走ってゴールを奊う」と「走ってゴールを防ぐ」を同時に成立させる。トーナメントに入ればスピードとスタミナだけで試合を変えられる選手は、森保ジャパンにとって代替不可能なオプションだ。
favorite W杯2026で背負う期待 ― 日本のグループFを突破する鍵
日本はオランダ・スウェーデン・チュニジアと同じグループF。前田にはスピードとハイプレスで試合を変えるジョーカー型1トップ・左WB両対応が期待される。
| 対戦相手 | 主要DFの特徴 | 前田に期待される役割 |
|---|---|---|
| オランダ | デ・リーフとハイラインを敷くCB陣 | 背後スペースをスピードで突くカウンター要員、驅け引きで加齢CBを疲弊させる役割 |
| スウェーデン | イサク・ギョケレスの長身2トップを抱える陣 | 長身型中央を避け、左サイドの裏スペースを狙う。前線からのビルドアップ妨害 |
| チュニジア | 引いて守るアフリカ勢 | ディープブロック攻略は前田の弱点、途中投入でスペース活用を期待 |
live_tv SNS・メディア発信
前田の発信スタイルは寡黙で淺々としたコメント。Instagramの@m_daizen0827 open_in_newはクラブ・代表でのオン/オフを丁寧に更新。Xも継続している。
メディア対応の特色は「気負わず自分のプレーをするだけ」という無骨さ。ゴール後のヒザスライディングは2021年生まれの長男の影響と語る、家庭人の一面も見せる。肇連もんなチャンピオンとは違う、黙々と走るタイプだ。
info 乗り越えるべき課題は「代表での決定力」
代表での決定力——前田の最大の課題はこれに尽きる。クラブではシーズン区、5点追加2桁得点を重ねてきたが、代表は27試合4得点とクラブでの量産に比して伸びていない。
25/26シーズン序盤の低調や、移籍希望が叶わず残留した件に伴うコンディションと精神面も看逃せない。上田綣世・小川航基といったストライカータイプとは異なる「機動力型」としての独自性は確保しているが、その付加価値を本大会本番で1試合でも多く示せるかが、彼に課された最後のミッションだ。