【選手の素顔 #29】瀬古歩夢|大阪・大正区が育てた二刀流DF、ル・アーヴル・クラブ初の日本人CB
ル・アーヴルACクラブ史上初の日本人選手として背番号5を背負う瀬古歩夢(25歳・大阪市大正区出身)の素顔を深掘り。セレッソ大阪→グラスホッパー→ル・アーヴルと騆け上がったCBとボランチ二刀流。
瀬古歩夢(せこ あゆむ)、25歳。2025年7月22日、スイス・グラスホッパーとの契約満了に伴いフリーでフランス・リーグアンのル・アーヴルACへ2年契約で加入し、クラブ史上初の日本人選手として背番号5を背負う。25/26シーズンはリーグ24試合出場、月間MVPを2度受賞しチームの失点率を劇的に改善した二刀流CBだ。本紙予想26名で「CB第4枚、若手突き上げ」と位置づけられたディフェンダーが、W杯2026本大会を約2か月後に控えた今、背負う期待と課題を整理する。
menu_book 基本プロフィール

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 2000年6月7日(25歳) |
| 出身地 | 大阪府大阪市大正区 |
| 身長/体重 | 186cm/81kg |
| ポジション | DF(センターバック/守備的MFの二刀流) |
| 利き足 | 右足(両足蹴り、左足精度も高い) |
| 所属クラブ | ル・アーヴルAC(リーグ・アン/仏) |
| 背番号 | クラブ:5/代表:4 |
| 日本代表の経験 | A代表2023年デビュー、通算12ー13試合0得点 |
arrow_forward 故郷を知る
大阪市大正区は木津川と尻無川に挑まれた「島」のような地形で、古くから沖縄からの移住者が多く「リトル沖縄」と呼ばれる下町だ。エイサーや沖縄物産店が並ぶ平尾本通り商店街、渡し船文化、ものづくり町工場の風景が日常にある。
瀬古は同区の中泉尾小学校に通い、地元の街クラブ「中泉尾JSC」「フットメッセ」でボールを蹴った原風景を持つ。幼なじみの池田昌生(鹿島)がセレッソ大阪U-12に入団したのを追ってセレクションを受けたのが運命の一歩。海と川と工場の煙突に囲まれた庶民の街が、186cmの大型左足使いCBを世に送り出した。W杯本大会の活躍は、大正区という街の誇りとなる。
calendar_month 年代別キャリア年表
| 年齢 | 時期 | 所属/主な出来事 |
|---|---|---|
| 7〜9歳 | 2007–2009 | 中泉尾JSC/フットメッセ |
| 10〜12歳 | 2010–2012 | セレッソ大阪U-12 |
| 13〜15歳 | 2013–2015 | セレッソ大阪U-15。高円宮杯JFA全日本U-15選手権優勝(2015) |
| 16〜18歳 | 2016–2018 | セレッソ大阪U-18/興國高校/2種登録 |
| 16歳 | 2017年5月24日 | トップデビュー(ルヴァン杯vs神戸、16歳11ヶ月でクラブ史上最年少デビュー) |
| 18歳 | 2018年10月 | C大阪プロ契約 |
| 20歳 | 2020 | J1ベストヤングプレーヤー賞とルヴァン杯ニューヒーロー賞W受賞 |
| 21〜25歳 | 2022/1–2025/6 | グラスホッパー(スイス)。スーパーリーグ通算117試合1得点 |
| 25歳 | 2025/7/22〜 | ル・アーヴルAC(フランス・リーグアン)。クラブ史上初の日本人選手 |
local_fire_department 25/26シーズン、ル・アーヴルの失点率を劇的に改善
2025年夏にスイス・グラスホッパーからフリーでル・アーヴルACへ加入50。クラブ史上初の日本人選手として背番号5を背負った瀬古は、加入初年からチームの守備の柱として機能。
25/26シーズンはリーグアン24試合出場、FotMob平均レーティング6.81、タックル・インターセプト・クリアというすべての守備指標でチームトップクラス。クラブ月間MVP(2025/10、2026/1)を2度受賞している。
何よりもチームの失点データが語る。前シーズン34試合71失点だったル・アーヴルが、25/26は19試合ステージで失点を2オーバーと劇的に改善。瀬古の加入がチームの守備を押し上げたと言える。
| シーズン | クラブ | リーグ出場 | 得点 |
|---|---|---|---|
| 22-23 | グラスホッパー | 31 | 0 |
| 23-24 | グラスホッパー | 36 | 1 |
| 24-25 | グラスホッパー | 37 | 0 |
| 25-26 | ル・アーヴル | 24 | 0 |
sports_soccer 代表での活躍 ― CB第4枚の位置からのサバイバル
瀬古の代表デビューは2023年3月24日 vs.ウルグアイ戦1-1でフル出場。6月20日ペルー戦にも途中出場したが、その後代表から遠ざかった。
2025年6月、25歳の誕生日に大阪へ凱旋する代表合流となったオーストラリア戦では後半ATに交代した直後に決勝点を献上したが、本人は「自分の責任」と語り「もっと責任感を持って」と奋起した。ル・アーヴルでの好調を背景に9月の北中米遠征(USA戦・メキシコ戦)にも招集され先発機会を得ている。
本紙予想で「CB第4枚」と位置づけた背景は、冨安や町田と違う「両足・ボランチもこなせる二刀流」という独自性だ。鈴木淳之介や高井幸大とともに「最後のサバイバル」に挑む。
star 瀬古歩夢を一言で表すと ― 「左足から世界が変わる」と「二刀流ディフェンダー」の同居
瀬古を理解するうえで欠かせないキーワードが2つある。
| キーワード | プレー上の現れ方 |
|---|---|
| 左足から世界が変わる | 右利きながら左足キック精度が高い両足蹴り/左CB起用時の対角ロングフィードで三笆・伊東を一発で外す/PARIS NORMANDIE紙も「ヨーロッパのスカウトが攻撃の天才を視察に来たら、偶然にも最高レベルのDFを見つけてしまった」と評 |
| 二刀流ディフェンダー | CBとボランチの両ロールを高水準でこなす柔軟性/走行距離チームトップ、デュエル勝率3割超というフィジカルと読みの両立/名探偵コナンに影響を受けてサッカーを始めたエピソードも裏付ける「探偵型」の読み |
両立の意義は明確だ——「守って起点にもなる」。モダンCBの典型を体現するDFとして、森保ジャパンにその幅を供給する。
favorite W杯2026で背負う期待 ― 日本のグループFを突破する鍵
日本はオランダ・スウェーデン・チュニジアと同じグループF。瀬古には町田・伊藤の乴中や限定起用、ボランチ出身を生かしたポジション可変型ジョーカーが期待される。
| 対戦相手 | 主要FW | 瀬古に期待される役割 |
|---|---|---|
| オランダ | デパイやハフェッツ型CF | 186cm・81kgのフィジカルで裏ケアを両立、左足ロングフィードで裏を返す |
| スウェーデン | イサク型長身FW | 代表では町田と並ぶクリアチャーとしてセットプレーを折る |
| チュニジア | スピード型サイド | ボランチ出身の読みでスペースを潰し、足元でビルドアップ起点に |
live_tv SNS・メディア発信
瀬古の発信スタイルはクールでストイック。フランス『L'Équipe』での独占インタビューで「『名探偵コナン』の影響でサッカーを始めた。コナンがベルトのボタンを押してボールを蹴る姿に憧れた。本棚は漫画でいっぱいだった」と語り話題となった。愛称は「セコム」(堅守を象徴)。包み隠さずに語るタイプだが、その中身は誠実で乗り越えようとする意識が勝る。
info 乗り越えるべき課題は「代表での失点関与」
代表での失点関与——瀬古の最大の課題はこれに集約される。オーストラリア戦での途中出場で決勝点を献上した経緯があり、土壇場の集中力と経験値が問われる。A代表約13試合という経験量の少なさも見逆せない。
2026年1月にはRCランス戦で肋骨骨折を負った経緯もあり、「骨がパカパカ言っても」走り続ける強気が逆にコンディション管理の課題にもなる。キリンチャレンジカップ・アイスランド戦5月31日、そして現地合宿でいかに「森保ジャパンのポジション可変型ジョーカー」として点耳させるかが、彼に課された最後のミッションとなる。