コラム2026-05-19

【選手の素顔 #36】渡辺剛|中大経由の遅咲きCBがフェイエノールトで掴んだ、町田負傷代替の本大会切符

186cmの右利きCB・渡辺剛(29歳)の素顔を深掘り。FC東京下部組織→中央大学→FC東京→コルトレイク→ヘント→フェイエノールトと駆け上がり、町田浩樹の負傷代替として5/15にW杯本メンバーへ滑り込んだ遅咲き・実直派センターバックの軌跡と本大会での期待を整理する。

#W杯

渡辺剛(わたなべ つよし)、29歳。FC東京U-15むさし→FC東京U-18→中央大学→FC東京を経て、2021年末にベルギーKVコルトレイクへ。KAAヘントでクラブ年間最優秀選手に選ばれ、2025年7月にフェイエノールトへ900万ユーロ(約15億円)の移籍金で完全移籍を果たした186cmのセンターバック。3/31イングランド戦の先発で代表アピールに成功し、5月15日に町田浩樹の負傷代替として26名に滑り込み選出された遅咲きの実直派。W杯2026本大会を約1か月後に控えた今、彼が背負う期待と、乗り越えるべき課題を整理する。


menu_book 基本プロフィール

_※ Wikimedia Commons 等の自由利用可能な単独ポートレート画像が現状確認できないため、本人写真は準備が整い次第追加します。_

項目内容
生年月日1997年2月5日(29歳)
出身地埼玉県
身長/体重186cm/78kg
ポジションDF(センターバック/3バック左・右いずれも可)
利き足右足
所属クラブフェイエノールト(エールディヴィジ・蘭)
背番号クラブ:4/代表:5(直近イングランド戦)
日本代表の経験A代表2019年12月14日 vs.香港戦デビュー。AFCアジアカップ2023出場。2026年大会で本大会初参戦

arrow_forward 故郷を知る

埼玉県は、浦和レッズ・大宮アルディージャを擁するJ屈指のサッカー王国として知られる。育成年代でも浦和ユース・大宮ユース・武南高校・正智深谷などの強豪が拮抗し、関東リーグや高円宮杯プレミアリーグEASTのレベルは全国でも頭ひとつ抜けている。

渡辺は埼玉に生まれながら、隣県のFC東京の下部組織(U-15むさし・U-18)で育ち、トップ昇格は叶わず中央大学へ進学。大学4年間で再びレベルを引き上げ、2019年にFC東京へ「出戻り」加入したという遅咲き型のキャリアを歩んだ。「Jの強豪ユースから直接プロ」ではなく、「ユース→大学→Jプロ→欧州」という階段を1段ずつ確実に登った男だ。W杯本大会の活躍は、大学経由でプロを目指す全国の選手にとっての励みとなる。


calendar_month 年代別キャリア年表

年齢時期所属/主な出来事
〜12歳〜2009埼玉の地元少年団でサッカーを始める
13〜15歳2010–2012FC東京U-15むさし。ジュニアユース時代から187cm級の体格
16〜18歳2013–2015FC東京U-18。トップ昇格は叶わず
18〜21歳2015–2018中央大学(関東大学リーグ)。CBとして関東選抜・ユニバ代表
22〜24歳2019–2021FC東京復帰。リーグ通算75試合5得点、ルヴァン杯優勝
24〜26歳2021.12–2023.6KVコルトレイク(ベルギー)。22/23リーグ34試合フル稼働
26〜28歳2023.6–2025.7KAAヘント。24/25シーズンクラブ年間最優秀選手
28歳〜2025.7〜現在フェイエノールト(蘭)。900万ユーロ・4年契約、背番号4

local_fire_department 25/26シーズン、フェイエノールトで証明した「読みのCB」

2025年7月23日、渡辺はヘントでの2年間の評価を引っさげエールディヴィジの強豪フェイエノールトへ移籍。約900万ユーロ(約15億円)という日本人DFとしては破格の移籍金で、クラブ史上4人目の日本人選手として4年契約を結んだ。背番号は伝統的にDFが背負う「4」。加入直後の8月12日にはCL予選プレーオフ・フェネルバフチェ戦で早くも2ゴールを記録し、欧州での適応を一気に証明した。

リーグ戦では上田綺世とともにチームの主軸を担い、25/26シーズンの公式戦出場は早くも40試合に到達。空中戦の強さと「相手の動き出しを先に読んでクリアする」予測の鋭さでフェイエノールトの3バック中央〜左で安定した守備を提供している。

シーズン所属リーグ戦得点リーグ出場得点/試合
22/23コルトレイク1340.03
23/24ヘント2310.06
24/25ヘント3340.09
25/26フェイエノールト3300.10

伸び続けるキャリア曲線――それが渡辺剛だ。20代後半に入っても出場数と得点関与を毎年伸ばし、29歳でいよいよ世代の主役を張る位置に到達した。


sports_soccer 代表での活躍 ― 6年越しの本大会切符

渡辺の代表初出場は2019年12月14日のEAFF E-1選手権・香港戦(5-0勝利)。当時は「FC東京の若手CB」としての招集だったが、その後の本大会出場は叶わず、カタールW杯2022は最終選考漏れを経験している。森保ジャパンでも板倉滉・冨安健洋・谷口彰悟といったCB陣の層に阻まれ、長く控え組として歩んだ。

潮目が変わったのが2026年3月31日のロンドン・ウェンブリーでのイングランド戦。CBの一角でフル出場し、ベリンガム不在のイングランド攻撃陣を完封、1-0勝利の立役者となった。現地メディアの評価は「ついに日本代表でも欧州CBの基準を満たすDFが現れた」だった。5月9日に町田浩樹(ザルツブルク)が負傷で離脱したことで、3バック左の代替候補として急浮上し、5/15に26名へ滑り込み選出された。


star 渡辺剛を一言で表すと ― 「フィジカル」と「コーチング」の同居

渡辺を理解するうえで欠かせないキーワードが2つある。

キーワードプレー上の現れ方
186cmのフィジカル空中戦勝率はベルギーリーグ時代から70%台/対人デュエルで身体を入れて潰す力/CL予選で得たヘディング2ゴールが象徴
コーチング能力DFラインの押し上げ・押し下げを声で統率/「守備を人の責任にしたくない、自分が統率して守りたい」(Soccer Magazine Web)と本人が語る/代表ではキャプテン経験豊富な板倉・冨安と並んでも遜色のない指示力

両立の意義は明確だ――身体の強さと頭脳の冷静さを1人で両立する。3バックの左ストッパーには、伊藤洋輝・鈴木淳之介という他候補もいるが、「経験値とコーチング能力」で渡辺は差別化を図る。


favorite W杯2026で背負う期待 ― 日本のグループFを突破する鍵

日本はオランダ・スウェーデン・チュニジアと同じグループF。渡辺に求められるのは、3バックの第4枚目から第5枚目として、流れを変えるためのジョーカー的起用だ。

対戦相手攻撃陣の特徴渡辺に期待される役割
オランダデパイ・シャビ・シモンズ・ガクポによる個の打開と高さあるFW陣空中戦と縦パスへの予測迎撃、3バック左で対応
スウェーデン長身FW2枚+サイドからのクロス攻撃高さでの押し合いに勝ち、セットプレー時の対人マッチアップ
チュニジアカウンターのスピードと裏抜け早めの押し上げと縦パスケアで「速さの局面」を未然に防ぐ

live_tv SNS・メディア発信

渡辺の発信スタイルは控えめで実直。Instagram の@tsuyoshi_watanabe5 open_in_newでは試合写真と家族・愛犬とのオフショットを淡々と更新。X(旧Twitter)の公式アカウントは未確認で、SNS露出は決して多くない。

メディア対応の特色は現場主義の自己分析。Soccer Magazine Web のインタビューで「守備を人の責任にしたくない。自分が統率して守りたい」と語ったように、抽象論ではなく自分が今やるべきことを具体的に言語化するタイプだ。サッカーキング・ゲキサカ等のロングインタビューでは「中央大学時代に育てた継続力」「ベルギー2クラブで掴んだ欧州CBの基準」を冷静に振り返り、派手さよりも継続を重んじる職人気質が一貫している。


info 乗り越えるべき課題は「3バック左の経験値」

渡辺の最大の課題は3バック左としての国際舞台経験だ。フェイエノールトでも代表でも、本職は3バック中央〜右での起用が中心で、左ストッパーとして対面のサイドアタッカーを抑えるシチュエーションは限定的だ。

5月31日のキリンチャレンジカップ・アイスランド戦、そして6月の現地合宿で、伊藤洋輝(バイエルン)と鈴木淳之介(コペンハーゲン)と並んでの3バック左ローテーションで実戦感覚を磨けるかが鍵となる。森保監督は「経験値の渡辺、瞬発力の鈴木、左足の伊藤」という3枚を場面ごとに使い分ける構想を描いており、その中で渡辺がどれだけ「ファーストチョイス」に近づけるか。29歳・初のW杯本大会、彼の出番はここから始まる。

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