【選手の素顔 #19】藤田譲瑪チマ|パリ五輪主将のハーフ・ダイナモ、ブンデスで描くポリバレントの未来図
本紙予想26名で「ポリバレント」と評される藤田譲瑪チマ(24歳・東京都町田市出身)の素顔を深掘り。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つハーフ、パリ五輪主将。2025年7月にFCザンクト・パウリへ移籍し市場価値は3倍に。
藤田譲瑪チマ(ふじた じぇるーちま)、24歳。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つハーフのダイナモは、2024年パリ五輪で日本代表主将を務めた。2025年7月にシント・トロイデンからFCザンクト・パウリへ移籍し、市場価値は加入時の3倍に高騰。本紙予想26名で「ポリバレント」と評される。W杯2026本大会を約2か月後に控えた今、彼が背負う期待と、乗り越えるべき課題を整理する。
menu_book 基本プロフィール

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 2002年2月16日(24歳) |
| 出身地 | 東京都町田市 |
| ルーツ | ナイジェリア人の父(イボ族)/日本人の母 |
| 身長/体重 | 175cm/76kg |
| ポジション | MF(アンカー/インサイドハーフ/CBも可) |
| 利き足 | 右足 |
| 所属クラブ | FCザンクト・パウリ(ブンデスリーガ/独) |
| 背番号 | クラブ:16/代表:6 |
| 日本代表の経験 | A代表2022年デビュー、通算8試合0得点。パリ五輪2024主将/準々決勝進出、U-23アジアカップMVP |
_上記画像はパリ五輪スペイン戦2024-08-02のU-23日本代表集合写真。本人コラムとしてのWikimedia Commons収載画像を採用。_
arrow_forward 故郷を知る
東京都町田市は神奈川県境に位置するベッドタウンで、サッカーが盛んな土地柄だ。J2の町田ゼルビアを擁し、FCトリプレッタ、ペガサスFCなど少年サッカークラブの層も厚い。藤田が幼少期を過ごした「町田大蔵FC」は地域の少年団で、近隣の鶴川・山崎エリアは町田の中でも昔からサッカー文化が根付くエリアだ。
父は1996年アトランタ五輪でナイジェリアが金メダルを獲得した姿に影響を受け、譲瑤チマが3歳のときボールを買い与えたという。名前の「チマ」はイボ族で「神のみぞ知る」を意味する一般的な名前で、母が「譲瑤」の漢字を当てた。ナイジェリア×日本のルーツは彼の体幹の強さ・球際のフィジカルとして現れ、175cmながら一回り大きい欧州選手とも互角に渡り合える源泉となっている。W杯本大会の活躍は、町田という街の誇りとなる。
calendar_month 年代別キャリア年表
| 年齢 | 時期 | 所属/主な出来事 |
|---|---|---|
| 6〜11歳 | 2008–2013 | 町田大蔵FC(地元少年団)でサッカー開始 |
| 12〜14歳 | 2014–2016 | 東京ヴェルディジュニアユース/町田市立鶴川中学校 |
| 15〜17歳 | 2017–2019 | 東京ヴェルディユース/東京都立山崎高等学校 |
| 17歳〜 | 2019/8〜2020 | 東京ヴェルディ(J2、2種登録→正式昇格) |
| 19歳 | 2021 | 徳島ヴォルティス(J1・期限付き) |
| 20〜21歳 | 2022–2023/7 | 横浜F・マリノス(J1)。2022年J1優勝 |
| 21〜23歳 | 2023/7–2025/6 | シント・トロイデンVV(ベルギー1部)。58試合11得点 |
| 23歳〜 | 2025/7〜現在 | FCザンクト・パウリ(ブンデスリーガ)。クラブ史3人目の日本人 |
local_fire_department 25/26シーズン、ブンデスデビューで市場価値が3倍に
2025年7月にシント・トロイデンからブンデスリーガのFCザンクト・パウリへ移籍。クラブ史上3人目の日本人選手となり、背番号16を背負った。25/26シーズンは約20試合1得点3アシスト、平均FotMobレーティング7.01、出場時間2,356分と主要選手に定着した。
加入時の市場価値350万ユーロ(約6億円)が2026年4月時点で1000万ユーロ(約19億円)に高騰、ブンデスデビューシーズンにしてぐんぐんと評価を上げている。ブレッシン監督は「勇気と明晰さ」「スペースを感じる力」を評価している。
| シーズン | 所属 | リーグ | 出場 | 得点 |
|---|---|---|---|---|
| 22/23 | 横浜FM | J1 | 主要 | — |
| 23/24 | シント・トロイデン | ベルギー1部 | 主要 | — |
| 24/25 | シント・トロイデン | ベルギー1部 | 主要 | — |
| 25/26 | ザンクト・パウリ | ブンデスリーガ | 約20 | 1 |
ただし、2026年4月に入りハイデンハイム戦では前半のみの出場となるなど、シーズン末にかけて出場時間が縮小傾向にあるとドイツ地元紙『MOPO』が指摘している点は見逆せない。
sports_soccer 代表での活躍 ― パリ五輪主将と「ポリバレント」評価の背景
藤田の代表デビューは2022年。A代表は通算8試合0得点と招集されれば出場する位置となっており、2026年3月のW杯予選でも出場記録がある。
しかし藤田の名をとどろかせたのは2024年パリ五輪だ。大岩剛監督に主将に指名された藤田は、グループステージを首位通過し準々決勝でスペインに敗れるまでチームを率いた。直前のU-23アジアカップでは日本優勝に貢献して大会MVPを受賞している。
本紙予想で「ポリバレント」と位置づけた背景は3つある。2ぢ1つはアンカー(6番)/インサイドハーフ(8番)/CBという3つのポジションでこなせること。2ぢ1つはインターセプト能力(シント・トロイデン時代でベルギー1部8パーセントタイル)と縦パスの質を両立させている点。3つめは森保ジャパンで作られた中盤のセカンド護衛型として、說明不要の実績を持つ点だ。
star 藤田譲瑪チマを一言で表すと ― 「ハーフ・ダイナモ」と「バランサー」の同居
藤田を理解するうえで欠かせないキーワードが2つある。
| キーワード | プレー上の現れ方 |
|---|---|
| ハーフ・ダイナモ | ナイジェリア×日本の体幹と球際の強さ/90分動き続けるエンジン/ボールを奪った瞬間の爆発的加速力 |
| バランサー(ポリバレント) | アンカー/インサイドハーフ/CBの3ロール対応/体幹を生かしたターンと縦パス/試合の流れを読んだ攻撃参加 |
両立の意義は明確だ——中盤の複雑なタスクをソロでコンプリートしつつ、事需を見てCBポジションも埋められる。これこそ、森保ジャパンがジョーカー型の控えとして藤田を選んだ根拠とされる。
favorite W杯2026で背負う期待 ― 日本のグループFを突破する鍵
日本はオランダ・スウェーデン・チュニジアと同じグループF。藤田にはポジションの多様性を生かしたジョーカー起用と、代表の中盤・CBの乴中となる試合での応急起用が期待される。
| 対戦相手 | 中盤の特徴 | 藤田に期待される役割 |
|---|---|---|
| オランダ | 可変型4-3-3、ダイナミックなローテーション | アンカー位置で中央封鎖、インターセプトでカウンター起点を作る |
| スウェーデン | フィジカル重視・セットプレー攻撃に強い | 175cmながら体幹の強さでセカンドボール回収、CBの代替オプションとしても使える柔軟性 |
| チュニジア | アフリカ勢の個人技、コンパクトブロック | インターセプト能力が機能。ナイジェリアのルーツとともに育んだフィジカルでアフリカ系選手との対峙にも臆せず |
live_tv SNS・メディア発信
藤田の発信スタイルは理論派・野心型だ。Instagramの@joel_fujita0216 open_in_newはクラブ・代表でのオン/オフを丁寧に更新。X(旧Twitter)の本人公式アカウントは未確認だが、母・藤田桂子さんの応援アカウントを口コミで見つけることができる。
メディア対応の特色は「25〜26歳でプレミアへ」と公言する野心家としての面。Number Webでのロングインタビューでは少年期にアルティ・カゾルラやメスト・エジルのパスワークに憧れていたと語るなど、知的な側面を見せるタイプだ。
info 乗り越えるべき課題は「出場時間と代表序列」
出場時間と代表序列——藤田の課題はこの2点に集約される。ザンクト・パウリでの出場時間が2026年4月に入りシーズン末にかけて縮小しており、ハイデンハイム戦では前半のみの起用となるしんり体験をした。
代表に戸ると、アンカー/ボランチ位置には守田英正・遠藤航・田中碧というベテラン勢が控え、経験値で先輩たちに一歩譲る状況だ。「ポリバレント」という評価は長所だが、逆に「ここ一番で先発を確保するポジションが定まらない」リスクと表裏一体でもある。キリンチャレンジカップ・アイスランド戦5月31日、そして現地合宿でいかにジョーカーとしての使い勝手を森保監督に点耳させるかが、彼に課された最後のミッションとなる。